食べものを分解・殺菌する胃

胃は、食物を消化する代表的な器官です。健康維持の指標ともなります。

また、粘液を内膜全体に分泌し、非常に強力な胃酸から保護していますが、暴飲暴食やストレスなどの過大な負荷がかかると粘液の分泌がうまくいかず、胃の内壁が胃酸によって荒れたり潰瘍を生じたりする場合があります。

胃のしくみとは?

胃は、食堂からつながる消化器官の玄関ともいえる内臓です。食べ物は、噴門という入口から胃の内部に入り、幽門という出口から十二指腸へ送られていきます。

私達が食べ物を摂取すると、食後何時間かは胃の中に食べ物を貯めておきます。そこで分泌された胃液と食べ物を良く混ぜます。胃液には食べ物を化学的に細かくするために必要な消化酵素が含まれています。

タンパク質、糖分、乳脂肪など、それぞれを分解するさまざまな消化酵素があります。

また、胃液に含まれる塩酸には殺菌効果があり、バクテリアの侵入などを防いでいます。食べ物がすべて消化され、胃の中が空になるまでには3~5時間かかります。

 

固形物を1mm程度に分解して腸に送る

胃の内部は、粘膜、平滑筋層、漿膜(しょうまく)の3層構造になっており、粘膜の表面には、胃酸や粘膜などを分泌する胃腺(開口部は胃小窩:いしょうか)が1㎝あたり100個ほど開いています。

栄養の消化・吸収は、小腸で行われるため、胃そのものは実はなくても生きていけるんです。では、胃の役割はなにか?といえば、食べ物の一時的な貯蔵と殺菌・消毒です。

小腸が1回に処理できる量には限界があるため、胃で貯蔵しながら送り込む量を調節しています。

体内は37℃程度の温度が保たれています。通常、そのような環境であれば食べ物は腐敗してしまいますが、胃から分泌される強烈な塩酸によって、殺菌・消毒がなされて腐敗を防ぐわけです。

同時に粘膜を分泌することで、胃壁は胃酸から保護する機能も備えています。このほか、固形物は、1mm程度に細かく分解してから腸内へ送り込みます。またタンパク質はペプシンという消化酵素によって分解されます。あと、ビタミンB12の吸収促進や胃液の分泌を調整したりする機能があります。

胃の中でどうやって消化するのか?

胃が持っている2つの特技

食べ物は消化するけれど自分の粘膜は粘液ガード

食べ物を消化する胃酸は、とても強力な塩酸です。だとしたらタンパク質でできている胃自身の粘膜も溶かしてしまうのでは?と思いますが、そこはしっかりと粘液でガードしています。

ビタミンB12を吸収する

ビタミンB12は足りなくなると悪性貧血になります。(鉄分の足りない貧血とは違います)

胃のQ&A ~ 胃の謎についてお答します!!

Q:胃酸が出過ぎるとどうなるの

胃の粘膜により胃酸をガードしているといいましたが、胃の粘膜まで傷ついてしまいキリキリと痛くなる胃潰瘍ができる場合があります。

胃潰瘍ってどんな病気?

胃や十二指腸の粘膜組織の防御機能が低下し、胃酸や消化酵素によって内壁が炎症を起こしたり、穴が空いたりする病気です。強いストレスで胃の粘膜の分泌が低下することもありますが、多くはピロリ菌の感染が原因です。ピロリ菌はアンモニアを産生し、粘膜組織を破壊するため潰瘍が起こりやすくなります

【主な症状は?】人によって諸王上の現れ方に差があります。ほとんど症状を感じない人もいますが、食後30分~1時間以内にお腹の上の部分や背中に痛みを感じる人も多く見られます。

【原因は?】本来、胃の粘膜は酸に強いのですが、ストレス、食事、喫煙、薬剤などの影響により、粘膜を守る働きが弱くなってしまい。少量の胃酸でも粘膜を溶かして傷つけてしまうのです。また、最近ではヘリコバクター・ピロリ菌が粘膜に障害を起こし、胃潰瘍の原因となっていることが分かってきました。胃潰瘍の患者さんの70%がヘリコバクター・ピロリ菌に感染していると言われています

【治療するには?】

症状に合わせて胃酸の分泌を抑える薬や粘膜を守る薬(抗不安薬ほか)を使います。ヘリコバクター・ピロリ菌に感染している場合は菌を除去する薬を使います。

潰瘍から出血している場合は内視鏡における止血を行います。安静にして、たばこ、アルコール、熱いものや辛い物などの刺激の強い食べ物を避け、消化の良いものを食べるようにすることが大切です。

Q:甘いものは別腹なんて本当にあるの?

胃は伸縮自在!!最大約15倍にも膨らむ

胃は、非常に膨張性に富んだ臓器になります。成人の場合は、空腹で何も入ってないときの容量は約100mlであり、野球のボール位の大きさになりますが・・・満腹時には大きく膨らんで、なんと最大で1.5ℓ程度(ペットボトル大位)の食べものを溜め込むことができます。さらに詰め込めばそれ以上に膨張するとも言われています。

胃の主な働きは上記したとおり、口から送られてきた食べ物を一時的に蓄えて、お粥のようにドロドロに消化して少しずつ小腸に送ることです。胃がある場所を人体図で見ていただくとわかりますが、胸部と腹部の境にある横隔膜より下方の左寄りのところに位置します。抗角膜の直下にあるのは肝臓だけなので、胃は残りのスペースを使って、自由自在に伸縮することができます。

ところで、よく「甘いものは別腹」と言われますが、これは本当でしょうか? はい、本当なんです!! 通常満腹になると脳の視床下部にある満腹中枢が「もう十分」という信号を出して食べるのをストップさせます。ところが、人間はおろかな生き物であり、好きな物を目の前にすると「食べたい」という気持ちのほうが上回り「オレキシン」という脳内ホルモンが分泌され、胃の筋肉を緩ませ、たとえ満腹でも胃の中に新たな食べ物が入るスペースを作るのです。驚きですよね~。

けれど・・今は腹7分目が長生きの秘訣ということが分かって来ているので、いくら甘い物は別腹とわかっても、食べ過ぎには十分に注意が必要です。

ところで・・・一度に10㎏以上のため物を平気で平らげるフードファイターという人達がいますが、彼らの胃は私達の胃とどう違うのでしょうか? 彼らは内臓の位置が胃が膨張しても邪魔にならない、腸の蠕動運動が活発で、食べたものが胃から腸へストンと映り栄養吸収がされにくい、満腹感を覚えないなどの生まれつきの身体的特性が考えられます。けれど、胃の本来の容量自体は普通の人とあまり変わらないそうです。実は、彼らはトレーニング(水を大量に飲むなど)により胃の柔軟性を高め、許容量を少しずつ広げて巨大化させているんです。胃は、そのほぼ全部が筋肉でできているので、トレーニングで鍛えることは理論的にも十分可能です。ただ、フードファイターを目指す人以外は、真似をするのは止めましょう。

Q:空腹になるとお腹がなるのはなぜ?

お腹が鳴るのは胃や腸が元気に働いている証拠

お腹が減ると「グゥ~」と鳴りますよね。この音のことを「腹鳴(ふくめい)」といいます。胃の中に食べ物が入ってくると、入口の噴門と言う場所から出口の幽門という場所に向かって胃が波打つように動く蠕動運動(ぜんどううんどう)が起こります。

蠕動運動によって攪拌された食べ物は、胃液の中のペプシンによってタンパク質が分解され、粥状(じゅくじょう)になって十二指腸へ送られます。そして胃が空になると十二指腸から「モチリン」というホルモンが分泌され「空腹期収縮」と呼ばれる強い収縮運動が始まります。この収縮が一因となって、胃の中に残っているわずかな食べ物ののカスなども十二指腸に移動しますが、このとき、胃腸の中の空気が圧迫されて「グゥ~」という音になるんです。

女の人など、人に聞かれると恥ずかしいと思う人も多いと思いますが、全然恥ずかしがる必要はありませんよ!!お腹が鳴るのは胃腸が活発に動いている証であり、胃腸が元気な証拠です。

また、胃や小腸に残っていた食べカスを空っぽにする、消化器官の掃除の効果があります。なので、むしろ間食や寝る前の食事で胃の休む間がなく、空腹を感じないようでは、高血圧や糖尿病などのリスクも高まり、注意が必要となります。

みなさんは、胃が空になったから空腹を感じるものと思っていませんか?激しい運動などのあと、血液中の血糖値が低下し、代わりにに体に蓄えていた脂肪を分解してエネルギーをつくるときにできる遊離脂肪酸が増えたことでエネルギー不足=空腹感の一因として認識され、新たなエネルギーの補給を促すのです。

また「飢餓収縮」といって食べ物が胃から腸へと送られるときにガスが発生したり、緊張やストレスから胃や腸が刺激されてお腹が鳴ることもあります。

あと、下痢でお腹が痛くておへそあたりがゴロゴロなるのは消化や栄養素の吸収が済んだ食べ物をすぐに外へ出そうと小腸や大腸が激しく動いている音の場合もあります。

胃と他の臓器や器官との関係

食べ物の臭いをかいでお腹が空くことってありますよね。食べ物について考えたり、見たり、臭いを嗅いだりすると、口の中に唾が出てきて胃液の分泌を刺激します。反対に運動や疲れ、心配事などは、消化を止めてしまいます。

これは、体を動かすと血液は筋肉に集まり、心配ごとなどのストレスは逆に血液の循環を悪くするために、いずれも胃から血液が離れていくことが原因です。胃は血液の助けがないとうまく消化できません。胃が働いているときは、運動や心配ごと、不安などのストレスをできるだけ与えないようにしましょう。

また、食後に走ったりするとお腹の横が痛ったのを経験された方もいると思いますが、これは、脾臓が血液を使って消化のお手伝いをしているときに、運動することで脾臓の血液が不足して縮んでしまうからです。

Q:胃が痛くなる原因は何?

急性胃炎とは?

小赤斑ができる表層性胃炎
斑状の発赤ができる表層性胃炎
線状の発赤が並ぶ表層性胃炎
血管が透けて見える表層性胃炎

【どんな病気?】

胃の粘膜に急に炎症が起きた状態です。

【主な症状は?】

食欲がない、腹痛、腹部の不快感、みぞおちの下あたりの痛み、吐き気や嘔吐、下痢など。まれに血を吐いたり、血便が出たりすることもあります。

【原因は?】

<外因性:外からの刺激によるもの>

食べ過ぎ、飲みすぎ。刺激の強い食べ物の摂りすぎ。ストレス、薬の副作用、アルコール、たばこの影響。食中毒を起こす細菌など

<内因性:他の病気が原因となっているもの>

かぜ、インフルエンザなどによる感染症。牛乳や卵、青魚などによるアレルギー反応など

【治療するには?】

症状に応じた治療を行います。

原因がはっきりしている場合にはそれを摂り除くことが基本です。

外因性の場合は、1~2日間断食をするか、消化のよいものを少しずつ食べるようにすると回復する場合もあります。

下痢や嘔吐がひどい場合には脱水症状を起こすことがありますので、医師の指示に従いましょう。

症状に合わせて、痛みを抑える薬、胃酸の分泌を抑える薬、胃の粘膜を保護する薬などを使います。

内因性の場合はこれに加えて、原因となる病気の治療を行います。

 

 

 

 

Q:食後の胸焼けってどんな症状なの?

胃液や胃酸の逆流による粘膜への刺激による痛み

暴飲暴食をしたり、脂っこいものを食べたときにみぞおちから胸のあたりにかけて食道がチリチリと焼けつくような痛み、違和感を感じることがありますが、これが「胸焼け」です。この症状は胃の入口にある噴門の「下部食道括約筋」が開いて、食塊とともに胃液や胃酸が逆流し、食道などの粘膜を刺激することが原因です。

胃は本来、食べ物が入ると噴門が閉じて逆流を妨ぐしくみになっています。ところが、食べ過ぎなどで消化に時間がかかると、胃の中で渋滞が起こります。

そのとき下部食道括約筋の締まりが緩くなっていると、逆流して「胸焼け」を起こしてしまうのです。このような症状を「胃食道逆流症(GERD)」と呼びます。GGERDには、食道粘膜にびらんや潰瘍がみられるものとみられないものがあります。内視鏡検査で異常な病気がみられるものを、「逆流性食道炎」といい、高齢者や肥満の人に多くみられます。

一方、食道粘膜に病変がみられないものを「非びらん性胃食道逆流症」と呼び、こちれは比較的若くやせ型の女性に多いという傾向があります。

GERDは、肥満や妊娠中、便秘などで内蔵に常に圧力がかかっている場合になりやすく、空腹時や夜間の胸焼けが特徴的症状です。喉の違和感や声がれ、胸の痛み、咳など、食道以外での症状がみられることもあります。

また、食道の粘膜は、胃の粘膜と違い、胃酸の刺激から身を守るしくみを持っていないので、逆流性食道炎が繰り替えされると「パレット食道」になり、パレット腺癌という食道がんになる可能性もあります。

脂っこいものを摂ると胃酸の分泌を促進しますので、低脂肪食をとること、禁煙、節度ある飲酒など生活習慣の改善も必要です。