タンパク質の配送センター(ゴジル装置・リソソームの働き)

タンパク質の配送センターゴジル装置(ゴジル体)

前回、リボソームでのタンパク質の合成についてご紹介しました。>>DNAの転写と翻訳とタンパク質の組み立て場所

では、リボソームで合成されたタンパク質は、今度はどこに行くのでしょうか? 

合成されたタンパク質は、ゴルジ装置(ゴジル体)という配送センターのような場所に行きます。

ゴルジ装置は、何層かの平たい構造が集まっていて、リボソームで作られたタンパク質は、この場所でタンパク質の構造を変えたり、修復したりされます。

これでタンパク質は完全体になるのです。完全体になったタンパク質は初めて働けるようになります。

その後、タンパク質は、小胞体(ゴジル小胞)という梱包材で梱包され、ここで荷札を付けられて、目的地へと送り出されるのです。

荷札というのは、実際に荷札をつけるわけではなく、運ばれ行く場所に応じてタンパク質にそれぞれ違う糖をくっつけます。

糖タンパクの種類で、ほしいタンパク質かどうかを見分けることになります。

ゴルジ体も他の細胞内小器官のように、閉じた膜で形成された閉鎖空間であり、外見上の特徴はイラストのように非常に綿密なつづら折り構造になっている点です。

ゴルジ体は、タンパク質の入口側と出口側が決まっていて、細胞の中では常に決まった向きに保持されています。

核に近い側からタンパク質はゴルジ体に入り込みます。こちらを搬入面(シス面)と呼びます。ゴルジ体を通過したタンパク質は搬出面(トランス面)と呼ばれる細胞膜に近い側から出て行きます。

ゴルジ体の役目は前述したとおりタンパク質の修復と送り出しであるため、ゴルジ体に入ったタンパク質は内部を定められた順序で運搬される過程で、流れ作業のように手際よく必要な加工を受けて、搬出面から外へ送りだされます。

ゴルジ体の内部は4つの区画に分けられており、核に近い側からシスゴルジ網、中間区画、トランス区画、トランスゴジル網といいます。

〇 シスゴルジ網は小胞体からのタンパク質の受け取りを担当

〇 中間区画とトランス区画でタンパク質が修復

〇 トランスゴジル網はタンパク質の配送作業を担当

ただし、輸送小胞を作った小胞体からゴルジ体へのタンパク質輸送のしくみが非常によく解明されているのとは対照的に、ゴルジ体内部でタンパク質がどのように輸送されているのかはまだ分かっていません。

ゴルジ体を形成する複数の袋の間も膜小胞のような輸送体が行き来しているのだと考えられています。

ゴルジ体の搬送方法

ゴルジ体を出た後のタンパク質の輸送は、目的の細胞内小器官までの輸送は輸送小胞が担います。

輸送小胞ごとに行き先は1つに決まっていて、目的地が同じタンパク質の場合は、ある程度まとまった量が輸送小胞の中に詰め込まれて移動します。

そのため、ゴルジ体にはまるでバスセンターのように、いろいろな行き先を示すシグナル配列のついたタンパク質が、自分が乗るべき輸送小胞周辺に選別された集められ、ゴルジ体の搬出面側の膜の一部が風船のようにふくらんで、タンパク質がその中に積み込まれます。

積み込みが完了すると、タンパク質の入ったふくらみはゴルジ体から切り離され、それがそのまま輸送小胞となって目的地に向かって細胞の中を移動し始めます。

輸送小胞がゴルジ体から分泌されるタイミングは恒常性分泌と調節性分泌の2種類があります。

恒常性分泌は細胞内タンパク質輸送のドル箱路線でもあるゴルジ体から細胞膜へのシャトル便になります。他の因子によって制御されることなく次々と輸送小胞がゴルジ体を出発して細胞膜へ向かいます。指令となる刺激を受け取って輸送小胞が必要な量のタンパク質を乗せて出発します。

消化酵素のように過剰に存在すると病気になってしまうタンパク質は、調節性分泌で適量がゴルジ体から運びだされます。

消化酵素は輸送のリクエストがあるまではゴルジ体に付着した状態の輸送小胞に蓄えられた状態で待機し、消化管に食べ物が流入すると、その情報がゴルジ体に伝えられて輸送小胞がゴルジ体から切り離され輸送が開始します。

一方ゴルジ体自身もタンパク質を使用しますが、それらにはゴルジ体を出発する輸送小胞に取り込まれないようにするシグナル配列が含まれています。

異物や不要物の処理場リソソーム

リソソームは、顕微鏡で観察するとボールのように見えます。50種類にも及ぶさまざまな種類の加水分解酵素を内部に含んでおり、細胞内外で不要となったタンパク質、核酸、脂質、糖質などの消化分解処理を行う細胞内小器官になります。

 

リソソームの特徴①

リソソームは、ゴルジ体のトランス面からブチっとちぎれて出芽される小さな袋状のもの(小胞)です。

ゴルジ体にはシス側とトランス側があるということについては、ゴルジ体の項目で前述しておりますが、復習しますと

★シス側~小胞体からタンパク質を受け取る側

★トランス側~修飾の完成したタンパク質を選別し発送する側

になります。

リソソームの特徴②

リソソームには、細胞内で働く加水分解酵素が含まれています。

タンパク質、炭水化物、脂質を分解します、つまりリソソームの中には、ほぼすべての物質を分解することができる加水分解酵素がいっぱい入っているのです。

リソソームの特徴③

加水分解酵素は酸性条件でよく働きます。

リソソームの膜の表面にはプロトンポンプというものがあります。イオンをリソソームの中に無理矢理送り込んでいくポンプのようなものなんですが、このポンプのお陰でリソソームの中はPH5の酸性状態になっているんです。

リソソームの特徴④

不要物の分解には強力な消化酵素を使用するため、細胞自身を分解してしまうことがないように、消化酵素はリン脂質の膜でできたリソソームの中に厳重に封印してあり、分解したい物質のみをリソソームの中に取り込んで処分するしくみになっています。

膜で隔離するという安全策に加えて、消化酵素は酸性で機能するように作られており、リソソームの内側は常にPH5の酸性に保たれています。細胞質はPH7の中性であるため、万が一、リソソームが破れて分解酵素が細胞質に流出しても、PHが上昇することで分解活性は低く抑えられると言う二重の安全策を装備しています。

このように膜の内外でPHに差をつけることができるしくみはプロトンポンプにあります。リソソームの膜にはプロトンポンプと呼ばれる水素イオンをリソソーム内に取り込むポンプのようなタンパク質が作動しているので、リソソームの内側は水素イオン濃度が細胞質の100倍も高いPH5となっています。

不要物を分解するためには、このような極端に細胞質と異なる環境の中に物質を放り込まなければならないのですが、核酸にあるような穴を開けてしまうとリソソームの中身が細胞質に流れ出してしまいます。そこで不要物は、エンドサイトーシスという独自の膜の外にある物質を膜の中に取り込むしくみによってリソソーム内に運びこまれるのです。

リソソームでは細胞外にある不要物を細胞内に取り込んで処分することもあります。

この場合も不要物が細胞膜表面にある不要物センサーでキャッチされると、センサー周辺の膜が内側にくぼみを形成し、やがて細胞内方向にそのくぼみがボールを形成するように切り離され、輸送小胞が形成されます。この輸送小胞は細胞質内を移動し、リソソーム膜の元となる初期エンドソームに融合します。

初期エンドソームにこぶ状に融合した輸送小胞は、運んできた不要物を初期エンドソームの中に放出します。不要物をキャッチするセンサーは輸送小胞にくっついてここまできていますが、細胞膜方向へ戻って行く輸送小胞でそのまま運ばれ、細胞表面の膜ともとどおり融合してふたたび不要物がやってくるのを待ち構える状態となります。