筋肉の構造と役割 筋肉・骨・関節のヘルスケア(第8回)

前回は、筋肉のしくみと動きについてご紹介しました。

今回は、筋肉の構造と役割についてご紹介したいと思います。

筋肉の構造

みなさん、体の様々な活動は筋肉の動きからは始まるということをご存知ですか?実は、筋肉は「男性で体重の約40%、女性では約35%」を占めるほどの巨大な組織になります。

どれだけの数があるかといいますと・・・

全身の筋肉は400種類600個と言われるくらい多く存在していて、骨の数が206個なので筋肉は2~3倍もあることになります。

私達の体は、何層にも重なったいろいろな種類の筋肉を動かして、いろいろな動作を生み出します。骨だけでは決して動くことができないのです。

筋肉は、そのほとんどが単独では作用せず複数が伸縮し、そのまわりの骨を引っ張り、その結果、体を自在に動かしています。人は筋肉の働きによって立ったり、歩いたり、重いものを持ったりできます。まさしく、今、あなたがパソコンしている瞬間も、家事をしている瞬間も、伸び縮みしているのです。

そして、この筋肉は、髪の毛よりも細い筋繊維(骨格筋細胞)が何層にも複雑に集まって構成されています。それらが収縮することで筋力を発揮することができます。

細い筋繊維が束になったものが集まって最終的に骨格筋になる

筋肉を細かく見ると、じつにさまざまな組織でできています。筋肉を細かく分けていくと、筋繊維が集まってできてることがわかります。

筋繊維が集まった束が筋束(きんそく)で、筋束が集まってできたのが骨格筋(筋肉)です。筋束の周囲には筋周膜という膜があり、骨格筋の周囲には筋上膜(きんじょうまく)があって、束がバラバラにならないように包んでいます。

骨格筋は筋繊維の数が多い筋肉、つまり太い骨格筋ほど大きな力を出すことが可能です。一番の基本となる筋線維を鍛えることで、筋肉を若々しく保つことができます。なぜなら、筋線維の伸び縮みで、人はエネルギーを生み出すことができるからです

典型的な筋線維は、長さが2~3㎝、直径が0.05mmと顕微鏡レベルの細さになります。 

これらの筋線維はさらに細い筋原線維群からできています。 筋肉の収縮のために、無数の毛細血管が酸素とグリコーゲンを供給しているのです。

筋肉の役割

では、この筋肉はいったいどのような働きをするのでしょうか?

筋肉には

1 体の各部位を動かす

2 姿勢や体位の維持

3 熱を作り出す

4 外部ストレスから体を保護する

等の役割があります。

体の各部位を動かすエンジンとしての役割

筋肉は、体を動かす運動だけではなく、呼吸運動や胃腸の消化運動などにもはたらきます。

筋肉の組織は筋細胞(筋線維)が主体となり、多数の神経や血管が侵入し、結合組織が介在しており、さらに、体内の臓器や心臓など、他の様々な器官と繋がってそれぞれの器官を動かしています。

例えば、心臓は意識していなくても常に血液をポンプの様に全身に送り出していますが、これも筋肉の働きのお陰です。

胃や腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)によって、消化が促されますが、これも筋肉の働きがあるから可能なことです。

つまり、体の外に現れる運動も、体内で起こっている運動も、あらゆる運動は筋肉が収縮することによって引き起こされます。

姿勢や体位の維持

立っているだけでも筋肉は身体の中で常に力を出し続けています。

座っているときも、仰向けに寝ているときも、低いレベルながら緊張を保っていて身体の姿勢を保持していて、この状態を、専門用語では「トーヌス」といいます。

熱を作る

人を含めた恒温動物は、ある一定の熱が身体にないと生きていくことができず、ヒトの場合は常に37℃ほどの体温が保たれるようになっています。

しかし、気温は通常37℃よりも低いので、自分自身でエネルギーを使うことによって熱を生み出す必要があります。その熱を生み出すことにおいて、一番貢献しているのが実は筋肉。

熱産生の約6割が筋肉で、2割前後が肝臓や腎臓、残りの2割が褐色脂肪とされています。

力学的ストレスから身体を保護すること

例えば、おなかを取り巻いている腹筋や背筋の存在によって、腹腔の中にある内臓は守られています。自動車でいえばボディがしっかりしているから、中の構造が正しく機能できるのです。

内分泌器官

これはここ5年くらいの研究でわかってきたことなのですが、運動することによって筋肉からある種の物質が分泌され、それが身体のさまざまな組織や器官に影響を及ぼすのではないかと考えられるようになってきています。