前回は、アブラが体に悪いといった誤解がどうして広まったのかについてご紹介しました。
今回は、「良いアブラ」とは何か? 「悪いアブラ」とは何かを知っていいただくために、まずは、アブラにはどんな種類があって、どのように分類されているのかについて紹介したいと思います。
少しややこしいのと、また追々この後の記事でも紹介していきますので、ここでは、さらっ~と目を通す感じで読んでくださいね。
飽和脂肪酸 と 不飽和脂肪酸
まず、アブラの種類については、前回の記事で
常温で固まる脂の「飽和脂肪酸」と、固まらない油の「不飽和脂肪酸」があるという説明をしました。
今回は、さらに詳しく両方の違いを説明していきたいと思います。
「飽和脂肪酸」は、バターやラード、ギー、肉の脂身などで、主に動物性のアブラがこれに該当します。
そして、「不飽和脂肪酸」は、植物性のアブラや魚のアブラが該当します。
すべての油脂に、この両方が含まれているのですが、より多く含まれる脂肪酸によって分類されています。
この2つの違いは何かというと、融点、つまり液体になる温度が違います。飽和脂肪酸が融点が高く、常温では固体です。熱さないと溶けないバターやラードは、飽和脂肪酸をより多く含んでいるということになります。
一方、不飽和脂肪酸は、融点が低いため、常温では液体です。いわゆるサラダ油やオリーブオイルなど植物性のアブラのほとんどが、不飽和脂肪酸をより多く含んでいます。
では、なぜ飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸は、融点が異なるのでしょうか?
それは分子構造が異なるからです。この点についても、前回説明させていただきましたが、油脂は、炭素と水素、酸素の3つが鎖のように連なっている物質です。酸素がくっついているのは鎖の終わりの部分だけであり、大部分が炭素と水素から構成されています。
炭素には手が4本、水素には手が1本あります。
飽和脂肪酸だと、炭素の2本の手それぞれに、水素が1つずつくっついています。
炭素の残りの手は、もう1つの炭素に繋がれていて、その炭素もまた、2本の手にそれぞれ水素がくっついており、こうして炭素同士の繋がりの両側に、水素が鈴なりに繋がっているのが飽和脂肪酸であり、非常に安定した構造になっています。
一方、不飽和脂肪酸は、炭素と水素のつながらいが、ところどころ途切れています。
途切れている箇所では、炭素の手は1つしか水素とつながっていません。あと2本の手は別の炭素の2本の手につながれており、その別の炭素もまた、1つしか水素とつながっていません。
このように炭素同士が、手を2ほんずつ出し合ってつながっている箇所のことを「二重結合」といいます。
違う言い方をすると、「飽和脂肪酸は二重結合がない脂肪酸」「不飽和脂肪酸は二重結合がある脂肪酸」ということになります。
そのため、飽和脂肪酸に比べると原子同士の結合が弱いため、常温では液谷なるのが不飽和脂肪酸になるのです。
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違いは、要するに、原子同士の結びつきの違いと言っても良いと思います。
一価不飽和脂肪酸 と 多価不飽和脂肪酸
さらに、詳しくお話すると、不飽和脂肪酸は、さらに「一価不飽和脂肪酸」と「多価不飽和脂肪酸」に分かれます。
不飽和脂肪酸には、水素と炭素のつながりが途切れている箇所があると説明しましたが、その途切れている数がたった1つだけの脂肪酸のことを「一価不飽和脂肪酸」といい、オリーブオイルに多く含まれる脂肪酸になります。
炭素と水素のつながりが鎖の最初から数えて9番目で途切れていることから、オメガ9系不飽和脂肪酸ともよばれます。
一方、結合が途切れている箇所が二つ以上の脂肪酸は、多価不飽和脂肪酸と呼ばれます。
多価不飽和脂肪酸には、いくつかの種類がありますが、特に重要なのはオメガ3系とオメガ6系になります。
名前の由来は、オメガ9系と同様に、炭素と水素のつながりが、鎖の最初から数えて何個目に途切れているかによります。
つまり、最初に鎖が3個目に途切れているとオメガ3系、6個目に途切れているとオメガ6系に分類されることになります。
このオメガ6とオメガ3だけは人間の体の中で作ることができず、食べ物から摂らないといけないので「必須脂肪酸」と呼ばれています。
アブラの中でも特に大切なのは、自分の体の中でつくることができない「必須脂肪酸」つまり「多価不飽和脂肪酸」のオメガ6とオメガ3です。
なぜ、これら必須脂肪酸が大切なのかといいますと、その他の脂肪酸は人間の体がその量を調整して、自ら作り出すことができますが。オメガ6とオメガ3については、食べ物から摂る以外に方法がないからです。
このオメガ6とオメガ3については、後程詳しく説明していきたいと思います。
長鎖脂肪酸 と 中鎖脂肪酸 と 短鎖脂肪酸
さらに脂肪酸は、原子がつながっている鎖の長さによっても区別されています。
① 短鎖脂肪酸 炭素が7つ以下のもの(ただし自然界にはほとんど存在しない)
② 中鎖脂肪酸 炭素が8~10のもの
③ 長鎖脂肪酸 炭素が12以上のもの
と分けられます。
たとえば、オリーブオイルに多く含まれるオレイン酸は、炭素数は18個であるため長鎖脂肪酸になります。鎖の最初から9個目に二重結合があるのでオメガ9系のオイルになります。そして、二重結合は1つだけの一価不飽和脂肪酸に分類されます。
一方、紅花油などに多く含まれるリノール酸は、オリーブオイルと同じ長鎖脂肪酸ですが、6個目に二重結合があり、さらにその次は3個後に二重結合が再びある「多価不飽和脂肪酸」になるオメガ6系のオイルに分類されます。
また、牛肉にはパルチミン酸という脂肪酸が多く含まれています。この脂肪酸の炭素数は16個ですから、やはり長鎖脂肪酸になります。
けれど、パルチミン酸は二重結合が1つもありません。なので長鎖脂肪酸の飽和脂肪酸と分類されます。
ややこしいですね~。
ここは、さらっと目を通しておいていただいて、この先は、このオイルは良いオイルか? 悪いオイルか? という点に注目していっていただければ良いと思います。
近年、身体に良い脂肪酸として、中鎖脂肪酸というのが盛んに取りざたされています。
中鎖脂肪酸は、長鎖脂肪酸に比べて速やかにエネルギーに変換されることから、脂肪に変換されにい、太りにくいというメリットが指摘されているんです。
脂肪酸の特質としてこれは間違いではないのですが、中鎖脂肪酸であればなんでもいいとは言い切れないところに問題があります。
この点については、また別のところで詳しくお話していきたいと思いますが、私達は「健康にいい」と宣伝されるものを、すぐに鵜呑みにしないように気をつける必要があります。その背景にはマーケティング戦略などによるフェイク情報が含まれていたりするので、自分でしっかりと情報を集め、いろんな側面から自分の体に本当にあった良いアブラを使っていただきたいな~と思います。
オメガ6とオメガ3の理想の割合は「4;1」
では、まず人間の体内で作り出すことができないオメガ6とオメガ3についてご紹介していきたいと思います。
この「多価不飽和脂肪酸」であるオメガ6とオメガ3は、別名を「酸素マグネット」と呼びます。
なぜ、そんな呼び方がされるのかといいますと、酸素を強引に引き寄せる力があるからです。
オメガ6やオメガ3でつくられた細胞膜や細胞は、体内でマグネットのように酸素を惹きつけるので、細胞は酸素が豊かになって元気になります。
深呼吸をすると、酸素をたっぷりと体内に取り込むことができるので、リフレッシュできるのと同じことが言えるため、酸素がたっぷりの環境下では、低酸素を好むがん細胞は増えることができません。
また、脳の構成要素の14%はオメガ3,10%はオメガ6でできています。
脳の機能を維持するためにも、これら2つの脂肪酸は、絶対に必要なアブラと言えるのです。
2014年に、平均年齢70歳の1000人以上の女性を対象に、脳の体積とオメガ3脂肪酸の関係を調べる研究が、アルツハイマードラッグディスカバリー財団で行われました。
まず、全員の脳をMRIでスキャンして脳の体積を測り、8年後にもう一度、脳の体積を測りました。2度目の測定のとき、検査対象の女性は平均で78歳になっていましたが、オメガ3脂肪酸に含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)の血中濃度が高いグループの女性は、低いグループの女性に比べて脳の体積が大きいという結果が出ました。
とりわけ、アルツハイマーの症状が出る前に委縮する海馬という脳の部分の体積が2.7%も大きかったのです。
このことからオメガ3が脳の収縮や加齢を防ぐ働きのあることがわかりました。
「じゃあ、オメガ6とオメガ3を含むアブラをたくさん摂ればいいのね」といきたいところですが、実は、人間の体はそれほど単純にはできていないのです。
なんと、オメガ6とオメガ3は、
オメガ6 体の中で炎症を起こす
オメガ3 炎症を取り除く
といった、体内ではまったく逆の働きをするので、どちらかが一方的に多くなってしまうと、身体のバランスが崩れてしまうんです。
では、健康的なオメガ6とオメガ3の比率はどうれくらいかというと、「オメガ6:オメガ3=4:1」の割合で存在する状態です。 2:1でも良いとされていて、これらの比率が健康的な細胞をつくり、健康な状態を維持するといわれています。
けれど、欧米型の食事が多くなっている現代人は、なんと!!「オメガ6:オメガ3=10:1」以上になっているとも言われています。
このバランスがの崩れた状態が細胞炎症を引き起こし、体調を崩すさまざまな症状の原因になってしまうのです。
動脈硬化を招き、脳梗塞や心筋梗塞などのリスクが高まるほか、肌に湿疹が出るなどの症状も引き起こしやすくなります。
例えば、
〇 アーモンドオイル100gには、オメガ6が17gでオメガ3はゼロ
〇 コーンオイル100gには、オメガ3が53g、オメガ3は1g
〇 グレープシードオイル100gには、オメガ6が70gで、オメガ3はゼロ
〇 大豆油は100gには、オメガ6が50gで、オメガ3は7グラム
〇 ビーナッツオイル100gは、オメガ6が32グラム、オメガ3はゼロ
という比率になっています。
今、列記したオイルは、不健康なアブラと言われているオイル陣であり、このようなアブラを摂取していると、体内の理想的なバランスが大きく崩れてしまうんですよ~。
ということで、今回は少しややこしいお話になりましたが、では実際に良いアブラと悪いアブラはどういったものなのか?について、次回ご紹介していきたいと思います。
このアブラに関する情報は、当サイト内の「アブラについての基本を学ぼう」のページでも、詳しく紹介していますので参考にしてくださいね